著名人の言葉

言の葉カード

 我々は、たとえば車があるのかないのか、どんな車に乗っているのか、家が大きいのか小さいのか…、そういう自分の持ち物の豊富さを、豊かさの象徴のように感じているのです。ところが、シューマッハーは、豊かさは、「止まれ、もう十分だ」と言えるところにあるのだというわけです。つまり、どれだけ人が羨(うらや)ましがるほどたくさんの物を持っていても、まだ足りない、まだ欲しいと、こう思って生きている人は、実は貧しいのだということですね。たとえば、百万円のお金を持っていても、まだ足りない、もっともっとという人は、貧しいということです。逆に、たとえ一万円であっても、これで十分だといえる人は、非常に豊かだということです。だから、豊かさとは、量から質へというか、その人の生活姿勢の内容の問題であるということになります。どうでしょうか。そのことが、我々のところにスーッと入ってくるかどうかです。
 我々自身が相対有限なものだということ、我々自身が絶対なものでないということ、そのことが持つ厳粛な意味ということを思います。私たちは、いろいろなことを思ったり、いろいろなことを言ったりしていますが、それは、ある限られた状況の中で意味を持つことであって、また、違うところへ行ったら、その意味するところが変わるということがあります
 背が高いとか低いとかということもそうでしょう。高い人は、背をかがめなければならない悩みもあるのです。だから、我々が相対有限であるということ、生まれたからには死ぬということ、それは非常に大事なことなのです。そのことが大事だということは、相対有限であるということの持っている意味を本当に知らないと、我々は、さまざまな尺度で振り回されてしまうのではないかと思うのです
 豊かさとは、量の問題ではないのだということです。つまり、自分が自分であることに、これでよしと言えるかどうかという問題だということです。

シューマッハー
経済学者(イギリス)

中川 皓三郎氏
帯広大谷短期大学元学長
『ただ念仏せよ ―絶望を超える道―』
(東本願寺出版)より
著名人 2026 06