若い人はSNSで日常的に短い言葉を発信することに慣れ親しんでいるので、短歌に対する敷居が低くなったのかなと思います。こんなに多くの人が日常的に自分の言葉を発信していた時代はないと思いますし、「五七五七七」のリズムのおもしろさが知られ、表現手段の一つの選択肢として短歌を考えてもらえることは、すごく嬉しいですね。
ただ、SNSなどでは「いいね」の数を競うような風潮もあって、「いいね」の数が多い方が偉いみたいな印象が持たれているようです。
『サラダ記念日』の「この味がいいね」から、「俵さんは「いいね」の元祖ですね」と言われることがありますが、これは、たった一つの「いいね」で人は幸せになれるという歌です。どうしても今の時代、数で括(くく)ってしまうところがあると思うんですけれど、一つ一つの「いいね」の向こうには、それぞれの人の表情があるということを、SNSを使う上では忘れないでいたい。たった一つの「いいね」で人は幸せになれるんだということは、30数年前に短歌を詠んだとき以上に、今大事になってきているのかなという感じがあります。
俵 万智(たわらまち)氏
歌人
月刊『同朋』2022年6月号
(東本願寺出版)より
著名人 2026 10