著名人の言葉

言の葉カード

 ある日いっぴきのでんでんむしが、自分の殻(から)の中に「かなしみ」がいっぱいつまっていることに気がつき、おともだちのでんでんむしのところへ行ってなげき話すと、おともだちのでんでんむしは「あなたばかりではありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」と言います。どのおともだちに話しても先のおともだちと全く同じことを言います。とうとうでんでんむしは「かなしみはだれでももっているのだ」と気がつき、なげくのをやめました。この童話は新美南吉(にいみ なんきち)が22歳の時に制作したものです。
 かなしみは小さく少ない方がよい、早く忘れた方がよいと思われがちです。かなしみは、つらさ、苦しさ、いたみ、虚しさをともないます。かなしみは澱(おり)のように心身の奥深いところに沈んで留(とど)まります。かなしみは人と比べることも、とって変わることもできません。一人ひとりが背負(せお)って生きていかなければならないのでしょう。
 ほとけさまは、かなしみは人間の真実なのだと説かれ、そんな人間の存在をそのままつつみ込んで必ず救うとお約束してくださっています。

『でんでんむしのかなしみ』
新美 南吉氏
児童文学作家

前田 素子氏
真宗大谷派 專龍寺(島根県)
真宗大谷派京都教区HP
今月のことば(2026年3月)
より
著名人 2026 07