暮らしの中の仏教語

言の葉カード

 臨終は、「いのちの終わる時」という意味です。ひとは、ひとと生まれたからには、必ず一度は臨終を迎えます。自分もいつか臨終を迎えるだろうと思っていました。ところが親鸞聖人は「臨終」を「いのちおわらんときまで」(『一念多念文意/いちねんたねんもんい』)というのです。それは「いのちおわるとき」でなく、「いのちおわらんとき」です。つまり、「いのちが終わる時点」ではなく、「いのちが終わろうとする時」という意味です。つまりやがて臨終という時が来るのではなく、〈いま〉この時がいのち終わろうとする時なのだという受け止めです。
 私たちは、臨終がやってくるのは、何年後、あるいは何十年後だと決めてかかっています。しかし、いのちの事実としては、明日には終わっているいのちを生きているのです。明日には生きていないかもしれない〈いま〉を生きているのです。死がやってくる可能性は、誰においても次の一瞬にあるのですから。

武田 定光氏
真宗大谷派 因速寺住職(東京都)

仏教語 2020 04