著名人の言葉

言の葉カード

 僕が幼いころに住んでいた場所には、死亡事故が多発する交差点がすぐ近くにあり、少し先には飛び降り自殺の名所だった橋がありました。そこで身の回りには「死」が溢れていて、その経験を通じて病死も事故死も自殺も同じに見えました。
 (以前本に書いたことですが、)自殺を考える人は、社会の中で生きづらさを誰よりも早く感じる、いわば“炭鉱のカナリア”(※)のような存在だと思うのです。だから、誰かが「死にたい」と思う社会は、誰もが生きづらい社会である。そういう視点で、誰もが思い詰められることがない社会に少しでも近づくために、取材を続けたいと思います。

炭鉱のカナリア
毒物に敏感なカナリアが炭鉱での有毒ガス検知に用いられたことから転じて、危機をいち早く察知して周囲に知らせる存在をいう。

渋井 哲也氏
ジャーナリスト

月刊「同朋」2018年4月号
(東本願寺出版)より
著名人 2020 06