著名人の言葉

言の葉カード

 どうすれば誰もが生きやすい社会になるのか
 「他者」と「自分」の違いを受け入れられないところに、大きな問題があると感じています。例えば、性的マイノリティの自殺率は高いというデータがありますが、彼らを自殺に追い込むのは、他者の“違い”を認められない人々です。決して、彼らが弱いからではないのです。
 その背景には、「同じ日本人なのだから、同じ感覚や気持ちをもっているはず」と無意識に考え、少数派に分類される性質や考えをもつ人を認められないという日本人ならではの傾向があるように思います。
 しかし、そもそもマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)は、性においてだけでなく、あらゆる分野で存在します。誰もがひとつくらい、人には言えない悩みや不安を抱えているはず。広い視野で考えると、誰もがマイノリティと言えるでしょう。マイノリティの集合体がマジョリティであり、マイノリティについて考えることは、マジョリティについて考えることと同義です。だからこそ、マイノリティに優しい社会は、マジョリティにとっても優しい社会といえると思うのです。

 現代の社会においては、自分と他者との“違い”を自ら受け入れられず、生きづらさや苦しみを抱えている人が多くいます。でもまずはそんな自分も受け入れてあげてほしい。そして、一人ひとりが独自のパーソナリティをもつことを知り、お互いに相手の“違い”を認め合えば、誰もが生きやすい社会になるのではないでしょうか。

杉山 文野氏
東京レインボープライド 共同代表

月刊『同朋』2019年9月号(東本願寺出版)より
著名人 2023 06