私が言っている「脱成長」というのは、仏教的な考えで言えば「足るを知る」という、非常に単純な話なんです。資本主義のもと、人間の欲はいつまでたっても満たされません。何かモノを買っても、また新しいモノが出るし、SNSを開けば、もっといいモノを持っている人がいる。そういう競争を続けていても、結局幸せになれないし、自然環境もぼろぼろになってしまう。であるならば、私たちの社会はすでに十分豊かなんじゃないか、ということに発想を転換して、足るを知るような社会に変えていくこと。それが、持続可能な社会をつくる道となり、同時に人間にとっても幸せな社会をつくることに繋がるのではないでしょうか。
Z世代と言われる若い世代に、気候危機に警鐘を鳴らすため、国会議事堂に一人で座り込んだスウェーデンのグレタ・トゥーンベリのような人が出てきました。なぜ彼女の主張に多くの若者たちが同意するかというと、今の状況に対する不安とか怒りがあるわけです。私たち大人が何もしなかったことのツケを押し付けられることへの不安や絶望や怒りがある。私たち大人は、彼らの怒りにきちんと向き合って、未来を選択しなければなりません。
斎藤 幸平氏
経済学者
真宗会館広報誌『サンガ』180号より
著名人 2023 01