ラップの面白いところって、格差社会のなかにある貧しい人たちが声をあげるツールという非常に大事な側面があるのと同時に、立場など関係なく共通ルールで闘うことのできること、ある意味スポーツみたいなところがありますよね―。
ラップはすごく純粋な詩的表現である以上に、いろいろな情報の集積なんです。そういう意味もあって、ぼくがやっているラップと、ぼくが書いている文章やラジオで話している活動は一直線なんですね。ものの見方さえ面白ければ、どんな時でもどんな場所でも面白いものになる。
それもヒップホップから学んだことです。貧しくて何も持っていないと言っている子たちが、発想の転換というか、めっちゃすごいかっこいいもの、しかもジャージだけを着てかっこつけるみたいなね。今あるもので何とかしたいというか。だから、あれがないこれがないと無いものねだりして、人生に絶望することは簡単だけど、ちょっとこう視点を落として、ちょっと角度を変えてやったら、今あなたがいるその場所が世界で一番面白い場所になるのではないか、そんな考え方を与えてくれるのがラップなんですね。
ライムスター宇多丸氏
ラッパー・ラジオパーソナリティ
真宗会館広報誌『サンガ』172号より
著名人 2021 07