料理番組などで、「タマネギを微塵(みじん)切りにして…」と言いますね。この「微塵」は仏教語です。意味は「目で見えるもっとも小さいもの」です。親鸞聖人は「この如来(にょらい)、微塵世界にみちみちたまえり」(『唯信鈔文意/ゆいしんしょうもんい』)と語ります。
「この如来」とは阿弥陀(あみだ)如来のことで、この世界のどんな小さな存在にも阿弥陀さんの悲愛が降り注いでいるという意味です。その根拠として『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』(行巻)では、
「諸天(しょてん)・人民(にんみん)・蜎飛(ねんぴ)・蠕動(ねんどう)の類、 我が名字を聞きて慈心(じしん)せざるはなけん」
と述べます。「諸天・人民」とは、人間などの存在のことですが、「蜎飛・蠕動」とは、細かい羽虫や地面をはう蛆虫(うじむし)などのことです。もしそれらの生き物が「慈心せざるはなけん」というのは、「それらの生き物が温かい喜びのこころに満たされなければ」という意味です。ここに人間だけが救われれば、それでよしと考える傲慢(ごうまん)さを批判しているのです。阿弥陀さんは、人間だけでなく、ミミズやボウフラまでも、救いの対象にされている如来です。
武田 定光氏
真宗大谷派 因速寺住職(東京都)
仏教語 2020 03