「諸行」の「行」というのは、「現象」という意味ですから、「諸行無常」とは、「もろもろの現象には、常なるものは無い」ということになります。つまり、あらゆる現象は、一定していて変わらないものなどはあり得ない、ということです。「縁」次第で「果」は異なるのです。しかもその「縁」も一刻一刻と変化しているのですから、現象を固定的にとらえるのは誤りであって、その事実を事実のとおりに受け取りなさい、という教えなのです。
私たちは頭では理解しているようですが、私たちの素直な思いはそれに背いてしまいます。昨日まで元気だったのだから、今日も元気なのは当然だと思い込んでいます。今日、元気であることは、実に不思議なことで、まことに有り難いことであるはずなのですが、それをそのように実感していません。
そして、明日も元気であるはずだと、幻想を抱いているのではないでしょうか。それは、何の根拠もない期待に過ぎないのであって、事実とは無関係な思いに過ぎないのです。人は、亡くなる前日まで生きているのです。
『ブッダの教え』
古田 和弘氏
大谷大学名誉教授
『現在を生きる仏教入門』東本願寺出版より
仏教語 2019 10