仏教の教えについて

言の葉カード

 この言葉は「自分を深く信じる」という意味です。普通は、自信をもつこと、辞書によれば「自分で自分の能力や価値などを信じること」と受け取れるのではないでしょうか。しかし、親鸞の場合はまったく違います。この言葉は、中国の善導(ぜんどう ※)という仏教に精通した徳の高い僧の言葉に基づいたものです。どのような自分を深く信じるのかというと、「自身は実際に、迷いのなかにあって、はるか昔から今この時もこれからも、常に迷い続けて、そこから離れることがまったくない」と深く信じるのです。
 開き直りのように思われるかもしれませんが、そうではなく、自力を尽くし自力に破れたところに自覚される人間の事実です。この時、人々を救おうとする阿弥陀(あみだ)さまの本願も同時に深く信じることとなります。
 このように親鸞が「自分を信じる」と言う場合、それは、自身は迷い続ける存在であるという痛みのなかでの自覚なのです。

善導(613~681)
中国の僧。親鸞の思想に影響を与えた七人の高僧のうちの一人。

『愚禿鈔(ぐとくしょう)』(親鸞)

『人生を照らす 親鸞の言葉』(リベラル社)より
教え 2024 01