著名人の言葉

言の葉カード

 現代は、ITのようなデジタル技術が全盛の時代ですね。さらにこれからAI(人工知能)が進化していけば、人間の心が機械で読めるようになるかもしれない。でも、そんな時代だからこそ、実はアナログが大事なんだと思うんですね。コンピュータがすべてを解決するような時代にあって、自分が生きる意味は何なのか、世の流行に振り回されているような自分の存在とは何なのか。親鸞さんを鏡にして自分の姿を見てみることで、いろんなものが見えてくるんじゃないかと思うんですよ。

 浄土真宗の教えは、答えを簡単に出してくれないから、難しいと思われがちです。親鸞さんは人間の全人格を相手にしているから、簡単に答えは出ない。むしろ、答えを得ることより、その答えを手探りで探っていく過程・問いにこそ大事な意味があるわけです。メーテルリンクの『青い鳥』のように、幸せは探しても見つからないけれど、実は自分の足元にある。あなたが今、そこにいることが実は幸せなんだという気づきを親鸞さんは与えてくれるのです。だから、答えはひとつじゃなくていい。10人が教えの本を読めば、10人の親鸞さんがいてもいいかなと思いますね。

向谷 匡史氏
作家・浄土真宗本願寺派僧侶

月刊『同朋』2019年9月号(東本願寺出版)より
著名人 2023 02