僧侶の法話

言の葉カード

 「どんな人生にしたいか」という問いに対して皆さんはどう答えるでしょうか。良い人生、幸せな人生、満足できる人生と多くの人が答えるのではないでしょうか。では、幸せや満足のためには何が必要ですか。家内安全、無病息災、裕福な生活…他にも色々ありそうですが、思い浮かぶものは一言で言うと「自分の思いにかなった生活」というものではないでしょうか。自分の思い通りになれば、幸せ。逆に思い通りならなければ、不幸。そうした思いが私たちにはあるのではないでしょうか。
 しかし厄介なことに、思い通りになっても、はじめは満足かもしれませんが時間が経てば新たな欲が出てきて現状に不満を抱き始めます。あるいは、病気になったらどうしようなど先に対する不安も出てきます。私たちの人生は順風満帆とはいかないからです。いつ何時逆境に立たされるかわかりませんし、いつかは破滅が約束されているのが私たちの人生です。しかし私たちは、その事実をなかなか受け入れることができません。繰り返しになりますが、無病息災、家内安全を願い、自分にとって都合の良いことは大歓迎ですが、都合の悪いことはなるべく避けて通りたいと思っているからです。それは自然な思いではありますが、実はその思いが自分を苦しめる原因だと仏教は教えています。
 例えば、結婚するということ一つとっても不幸になりたくて結婚する人は恐らくいないでしょう。結婚の先に幸せを期待するはずです。しかし、その思いが私を縛るのです。ある先生は「幸せになるために結婚するのではありません。」と言われました。先生はさらに続けて「幸せを求める心は必ず不幸を作る心です。善を求める心は必ず悪を作ります。思い通りにならない結婚生活の中で聞法(もんぽう ※)して、思いを超えて全てが仏様の世界にあることに目覚めて、幸も不幸も、善も悪も、好きも嫌いも、全てを引き受けていける者になって下さい。それでこそ、お二人の人生が120%完結するのだと思います。」と言われました。人生の中で出あう様々なことに対してこれは善い、これは悪いと決めつけてしまう私。それが苦しみの原因なのに、そのことに気づかない私。その私そのものに目を向ける必要があると教える仏教を聞いていきたいと思います。

聞法
仏の教えを聴聞すること

黒田 法潤氏
真宗大谷派 常休寺(岐阜県)

真宗大谷派 大垣別院 テレホン法話(2017年)より
法話 2024 04