仏教の教えについて

言の葉カード

 コロナという時代を迎え、不登校の小中高生は過去最多の19万人に、という報道があった。今、時代社会そのものが大きな闇を抱えている。
 子どもと関わることを大切にしてきたお寺の活動の中でも、不登校ということについて今まで保護者から相談を受けてきた。しかし、実際にその人と出会い、話を聞くということはとても難しいこと。彼ら・彼女らの辛さは、なかなかわからないものだ。
 親鸞聖人は、当時、具縛(ぐばく)の凡愚(ぼんぐ)や屠沽(とこ)の下類(げるい)と呼ばれていた人々と出会い、こう言われた。
 よろずの煩悩(ぼんのう)にしばられたるわれらなり  これは、それらの一人ひとりとていねいに出会い、きちんと話を聞いた人でなければ出てこない言葉なのだろう。さまざまな煩(わずら)いや悩(なや)みにがんじがらめになっている人々の、具体的な現実を知り続けられたのだろう。
 さらにそのすがたを他人事とせず、自分もその中の一人だと、すなわち「われらなり」と受け止められた。
 ここに、「ひとりと出会う ともに生きる」という親鸞聖人がおられる。
 私もそのような生き方を実践したい。

『唯信鈔文意(ゆいしんしょうもんい)』(親鸞)

酒井 義一氏
真宗大谷派 存明寺住職(東京都)
月刊『同朋』2022年9月号(東本願寺出版)より
教え 2023 12