暮らしの中の仏教語

言の葉カード

 「これは一大事だ」と私たちは使います。この「一大事」は仏教語です。意味は「最も大切な事」等です。しかし「何が人生の一大事なのか」と問われると、はたと立ち止まらざるを得ません。私たちは、やがて人生が終わることを知って生きています。ゴールが「死」だとすると、いまやっている仕事や勉強は何のためなのでしょうか。これは「人生の意味とは何か」という問いになります。この問いに釘付けになり、お釈迦さまは「出家」されました。これはお釈迦さまの時代だから可能なことで、現代の私たちには「出家」は不可能です。
 また浄土真宗は「出家」をする必要のない教えです。「出家」をしたひとだけが助かる教えであれば、それは誰もが助かる仏教ではありません。いまの仕事を続けながら、家庭生活を続けながら、その問いをごまかさずに答えを求め続けることが「一大事」なのではないでしょうか。「問い」の中に必ず答えはあるのです。

武田 定光氏
真宗大谷派 因速寺住職(東京都)

仏教語 2020 01