仏教の教えについて

言の葉カード

 お釈迦さまがお亡くなりになる少し前に語られた言葉と伝えられています。何事かを成し遂げた人だから言えた言葉と思われるかも知れませんが、そうではないでしょう。「人間の生命」はみなにあたえられたものです。その与えられた「人間の生命」を、今、生きている。苦しみとして受けとめているその人生が「甘美なもの」であり、そのように受けとめる道があると教えているのが、このお釈迦さまの言葉なのです。
 心臓の鼓動は、力尽きるまで止まりません。生命が、一つの文句も言わず、生の終わりまで私を生きてくれている。その生命を、自分で見捨てない道を求めてほしい、本当に大切に生きる道を求めてほしい。それがお釈迦さまの私たちへの遺言なのです。

『仏典のことば』中村元訳
(岩波現代文庫)

鶴見 晃氏
真宗大谷派 教学研究所所員
「サンガ」No.133より
教え 2018 07