著名人の言葉

言の葉カード

 お話を聞いていくなかで、すごく感じるのが、つらいという気持ちはわかるけれども、つらさの根源を探す体力が皆さんには残っていなかったりするんですね。
 なんで自分はここまでつらいのだろうか。なんでこの環境に身を置いているのだろうか。なんでこんな社会で暮らしているんだろうか。だから私たちも支援していくなかで、対症療法的な、骨折にバンドエイドを貼っているような気持ちになることも結構あります。
 ただ、「死んでしまいたい」という裏にあるのは「きちんと、生きたい」なのかもしれません。生きることに真面目すぎる人が、死を自分の逃げ場としてとらえやすいのかも。私はそのような人たちの味方でいたい。生きること以外からは逃げてもいいのです。

 メンタルヘルスケアの相談で、「セルフケアの仕方を教えてください」と言われるんです。でも、本当に必要なことは、年代を問わず、その人やその子にとっての依存先をいっぱい見つけてあげることなんですね。生きる理由を見つけることよりも死ぬ理由を見つけるほうが楽ですし、人に責任を課すよりも自分に責任を課したほうが楽。高度成長で、外に外に行っていたものが、だんだん時代が変化するとともに内に内に来てしまっている。
 その依存先というのは、カウンセラーかもしれないし、親御さんかもしれないし、友人かもしれない。自分の大好きなゲームかもしれないし、SNSかもしれない。そういう依存先をいっぱい持っておくことが、本当はメンタルヘルスにはいいんです。でも、依存はいけないとか、セルフケアしなさいというふうに言われてしまう。私は依存先をたくさん見つけてくださいとお伝えしています。

みたらし 加奈氏
臨床心理士・公認心理師

真宗会館広報誌『サンガ』
184号より
著名人 2023 07