僧意工夫

迷走しながら思いを綴る 
お坊さんのエッセイ

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 最近のテレビ番組の傾向なのか、クイズや謎解き番組が増えてきました。例えば、小学校で習う漢字をベースに言葉の反対語を筆記回答するというクイズ。「前進」の反対語は「後退」、「勝利」の反対語は「敗北」、「上昇」の反対語は「下降」…。知識や教養を身につけるといった意味もあり、テレビ番組として好まれる側面があるのでしょう。
 では「成功」の反対語は――?
 言語的、また論理的にいえば「失敗」となるでしょう。標題の言葉は屁理屈(へりくつ)に聞こえるかもしれません。ですがこの考え方も、人生においてはとても大切な意味があるように思うのです。

 「夢がない」「目標がもてない」と言う子どもが多くなったと、ある教育学の先生がおっしゃっていました。社会全体の雰囲気として「成功(や安定)」することに重きを置き過ぎているためか、「失敗(や不安定)」することは許されず、失敗したときの風当たりが強い、と。
 失敗してはいけないという雰囲気は、子どもの受け取りとしては「失敗できない」という萎縮につながる場合があるそうです。つまり、「夢や目標がもてない」というのは、広い世界への子どもの好奇心やチャレンジ精神を大人たちが狭めているのではないかと問題提起されていました。
 失敗することは悪いことではないということを、子どもたちにちゃんと伝えることが大切だとその先生は言われます。むしろ、失敗(的なこと)がなければ成功もない。なので「成功」の対極が「失敗」ではないのだと。どんなに小さなことであっても、試みるという経験が、その人の視野が広がっていくタネ(種)になるんだともおっしゃっていました。

 ここまでくると、成功や失敗とは何を指すのかとも思ってきます。社会経験を積めば積むほど合理的な考え方が私たちに立ちはだかります。子どものケースの話ですが、大人たち(自分?)にも当てはまるような気がします。(※では何でもしていいのか、という妄念については次の機会に)
 さらにお坊さんとして付け加えるならば、「成功しても失敗しても何もできなくても、あなたはあなたのままで尊い」ということ。豊かさの尺度は誰にも量れないのですから。

 楽しく見るべきクイズ番組を、超難問ばりの顔で見ている今日この頃です。。。

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