僧侶の法話

言の葉カード

 毎年新年を迎えると、「今年こそは良いことがありますように」と心機一転を誓う声がよく聞かれます。「今年こそは」と自分を奮い立たせなければならないのは、昨年は思い描いた目標が達成できなかったからなのでしょうか? それとも、挫折の繰り返しだったからなのでしょうか
 どうも私たちは、言葉を「良いこと」「悪いこと」と勝手に決めつけてしまっているところがあるようです。例えば「挫折」というと私たちは「悪いこと」というイメージが強いですが、「挫折」することが悪いのではないのでしょう。誰しも目標が達成できず、「挫折」することもあります。ただそれは、目標が達成できなかったことが悪いのではなく、そもそも目標設定に問題があったのかもしれません。時には、自分では頑張っているつもりでも、周りから見るとただの意地っ張りになっているだけということもあるかもしれません。
 人生は「挫折」や「失敗」の繰り返しです。自分にとって振り返りたくないような経験でも、それがこの私を育ててくださったからこそ今の私になれたのです。「挫折は悪いこと」という思い込みから離れて、むしろそのような逆境から自分を見つめ直し、新たに歩んでいけばいいのではないでしょうか。
 私が京都の大谷専修学院で仏教を学んでいた頃、ある学生が「人生こんなはずではなかった」と嘆いたことがあったのです。それを聞いた師が「こんなはずやったんや。あなたの身の事実を生きろ」とおっしゃった言葉が今でも忘れられません。

川村 妙慶氏
真宗大谷派僧侶・アナウンサー

「同朋新聞」2020年1月号(東本願寺出版)
「ミカタがカワル?」より
法話 2022 01