仏教の教えについて

言の葉カード

 この言葉は、室町時代の浄土真宗の僧侶、蓮如(れんにょ ※)が述べたものです。ある人が蓮如に、「私は、仏さまの教えを聴いている時は、なるほどその通りだ、ありがたいことだ、と思っているのですが、すぐにそのような気持ちを忘れてしまいます。まるで、穴だらけのかごで水を汲(く)もうとしているようなものですね。」と言いました。するとそれに対して蓮如は、「かごで水を汲もうとするから大変なのではないかな? かごを水に漬けるような気持ちでいたらどうかな?」と言ったというのです。この会話はどういうことをあらわしているのでしょうか。
 ここでいう仏さまの教えとは、私たちの心が、自分中心のものさしを持っていることを教えてくれる存在です。ある人は、そうした自分の心の問題を知らせてくれる存在の大切さをせっかく感じても、すぐに忘れてしまう、と言うのです。これに対し蓮如は、そうした大切な存在を、自分の内側に取り込もうとするからつらくなるのだとし、自分のそれまでのものさしが間に合わないと教えてくれた存在の中に、ただ身をひたすような気持ちで接すればよいのではないか、と語っています。

蓮如
室町時代の浄土真宗の僧侶

大谷大学HP「きょうのことば」(2014年5月)より
教え 2018 05