僧侶の法話

言の葉カード

 今、私のお寺に、ある法語(仏教の言葉)を掲示しています。『一人でいると孤独感、二人でいると劣等感、三人でいると疎外感』というものです。他のお寺さんに掲示されていたものに、私のお寺では文末に「あなたはあなたのままがいい」と付け加えました。「孤独感、劣等感、疎外感」は人間の現実の問題です。「あなたはあなたのままがいい」は仏さまの言葉になります。日常会話では「あなたはあなたのままでいい」ですが、仏さまは「あなたはあなたのままがいい」と願われました。皆それぞれに光っているのだということ。しかし、私たちはそのことがわからない。五濁(ごじょく ※)という言葉で表現されるように私たちは濁りのなかにいるために眼差しが曇っているからかもしれません。
 お念仏(ねんぶつ)は、阿弥陀(あみだ)さまからの願いなのです。仏さまから頂いたものに対する“ありがとう”の表現がお念仏なのです。2500年前のお釈迦さまの時代から、親鸞聖人が生きた時代、そして今を生きている私のところまでお経の言葉が伝えられたように、生きることに対する人間の根本課題が伝えられているのでしょう。仏さまの願いに触れ、生き方を問い直して、揺らぐ自分、根のない自分を受け止めていきたいものです。

五濁
娑婆世界(現世)において私たちを覆(おお)う五つの濁りのこと。

藤場 芳子氏
真宗大谷派 常讃寺副住職(石川県)

真宗会館「お彼岸法要」より
法話 2018 03