僧侶の法話

言の葉カード

 合掌は、左右の手のひらと五指を合わせて、尊敬の気持ちをあらわす作法です。古代インドからの礼法なのですが、これが東南アジア、中国から朝鮮半島を経て、日本に伝えられました。人々は互いに尊敬の気持ちを伝えるために合掌し合うのです。合掌とは相手を敬(うやま)い、信頼することをあらわす挨拶(あいさつ)です。仏教徒の場合、合掌は、両手を合わせて念珠(ねんじゅ)をかけ、心の散乱をしずめ、集中させて、仏・菩薩(ぼさつ)に敬意をあらわしています。

 心というものは、見たり、触ったりすることができません。尊敬の気持ちをいくら募(つの)らせていても、具体的な形をとらなければ、伝わらないのです。阿弥陀仏(あみだぶつ)が名号(みょうごう)という具体的なはたらきをとってくださるように、私たちもまた、合掌という具体的な形をとるのが自然ではないでしょうか。気持ちには姿勢などの行為が伴うものです。

 このように合掌の姿勢をとることには、阿弥陀仏への敬いをあらわす意味がありますが、それだけではなく、阿弥陀仏を信じるということを自分自身にも思い知らせるという意味があります。合掌することで、尊敬の気持ちをまず自分自身にも知らせていくのです。

古田 和弘氏
大谷大学名誉教授

『Q&A 本尊の?に答えます』(東本願寺出版)より
法話 2024 05