仏教の教えについて

言の葉カード

 お経について善導(ぜんどう)大師(※)は、「『経』というは経(けい)なり。経よく緯(い)を持ちて匹丈(ひつじょう)を成ずることを得て、その丈用あり」(『観経疏/かんぎょうしょ』)と表現されます。経は経糸(たていと)で、緯は緯糸(よこいと)という意味です。匹丈は布を表しています。経糸がしっかりはられて、緯糸を通すことで布が織り上げられます。つまり、経糸が緯糸を受け止めていくわけです。
 ですからお経は、あなたをずっと受け止めていく、人生を貫く経糸として表現されているのです。緯糸は、私たちの日々の体験や、それこそ点数が良かった悪かったと言っている一つひとつの出来事です。経糸がしっかりしていなければ、緯糸という一つひとつの体験は思い出の積み重ねにはなっても、結局最後にバラバラになってしまいます。
 それに対して、一つひとつの出来事をいただいていくために、経糸という形で受け止めてくださるものがある。そのことによって、一つの貫かれたものとして、人生に自分を本当に確かめていく方向が与えられます。それが、お経のお意(こころ)だと教えられているのです。
 そういう意味でお葬式は、私を大事に受けとめてくださった方の織り上げた人生の布を確認する場であると同時に、今度はその方の布を私が受け止めていただいていくことです。つまり、その方の人生から、改めて私自身の経糸を確かめ、そこに習っていくことが、浄土真宗のお葬式ではないかと思います。

善導(613~681)
中国の僧。親鸞の思想に影響を与えた七人の高僧のうちの一人。

『観経疏』(善導)

四衢 亮氏
真宗大谷派 不遠寺住職(岐阜県)
「南御堂」新聞2019年8月号
(難波別院発行)より
教え 2020 05