迷走しながら思いを綴る
お坊さんのエッセイ
第1話
「お坊さんって普段どんな生活をしているんですか?」———。
ご縁のあった人から聞かれることの上位にくいこんでくる質問です。「朝早く起きて、掃除をして、お参りがあって…」。「その他には?」と聞かれないまでも、世間でイメージされること以外は、なかなかわからないという印象を持っている人も少なくないように思います。
もちろん、お寺やお坊さんによって違います。地域や規模や宗旨(宗派)によっても違います。けれど共通していることの一つに、「聞」ということがあるように感じています。仏さまの教えを「聞」く。お参りで出会う人、お寺に足を運んだ人の話を「聞」く。自分自身が僧侶として、何をよりどころに生きていくのかという、自らの声を「聞」く。
今のことをもう少し世間的にいうと、仏教の勉強をしたり勉強会を開いたり、地域の“駆け込み寺”として立ち寄った人たちと交流したり、社会で起きていることに思いを馳せ、形は違えど様々に発信したりということも行っています。
「へぇー…」という程度に止まってしまいそうですが…。そんな「へぇー…」という感想からもう一歩、お坊さんが身近な存在として感じてもらえるように、日々の生活の中で考えていることや感じたことを『僧意工夫(そういくふう)』というエッセイとしてこれから綴っていきたいと思います。
右往左往しながら「生きるとは何だろう」と、思索の日々を重ねる毎日。先行きの見えにくい渾沌(こんとん)とした社会状況であっても、「生きる」ということに目を背けず、『迷走』しながら言葉を紡ぎたいと思います。