この社会は強者の世界。お金もうけがうまいとか、体が強いとか、能力のある人に自由競争させて、そういう人の尺度で社会をつくろうとしている。
文学って弱い言葉なんです。弱いから必要なんです。強いことを言わないでしょう。おれはだめだというのが文学の言葉ですね。でも、そういう弱くて、かすかで、耳を澄ませないと聞こえない言葉が長期間で考えると、社会を住みやすいものにすると思います。強いもの中心は、つまり単一構造。弱い人と交わって複雑なほうが、社会はしなやかさを持っているんです。
高橋 源一郎(作家)
「サンガ」No.128より
著名人 2018 03