僧侶の法話

言の葉カード

 親鸞聖人は、明日どうなるかわからない状況の中で生きている人たちに対して、あなたには「お念仏(ねんぶつ)」しか残っていないと勧(すす)められました。京都の真宗本廟(しんしゅうほんびょう/東本願寺)は、強大な権力をもった人、莫大(ばくだい)な財産をもった人が作った場所ではありません。本当に明日まで生きられるかどうかわからない人々が、「お念仏」に促される素直さによって、力を合わせて造営してきたのです。それは、自分たちの喜びの思いを形にあらわしたのです。阿弥陀仏(あみだぶつ)への素直な心、そういう心が確かめられる場所なのです。そういう心が動き始める場所なのです。だからこの「場」が重要な、そして特別な意味を持っているのです。真宗本廟は、ただの空間ではありません。本願(ほんがん ※)を喜ぶ思い、これしかないという思いが渦巻いている「場」なのです。そういう「場」をお互いに感じ取り合いたいと思っています。

本願
全ての生きとし生けるものを救いたいと発された阿弥陀仏の願い。

古田 和弘氏(大谷大学名誉教授)

市民講座参加者の東本願寺参拝「法話」より
法話 2018 01