

アクション場面は脚本だと「激闘が繰り広げられる」といった一言で終わってしまうこともありますが、そこで展開するのは登場人物たちの生死を賭けたドラマ。殺したり、殺されたりするわけですが、現実的にも人間の死って人生を変えてしまう一大事ですよね。
『ある用務員』(2021年)という作品では、相棒が殺され、そのあと私が一人で敵に立ち向かう場面があるのですが、「もし親友の命が奪われてしまったら」と想像しながら演じました。自分より大事な人間に危害を加えられたら、自分は生死をいとわず闘う、そんな気持ちでした。
かといって、すべての映画が死を重く暗く扱うべきとは思っていなくて、カラッと明るく描いてもいい。自分が現実で理性を保って生きるためにも、作品の中では理性を度外視して、一生懸命でいたい。だから、映画の中での生き死には、せっかくなら現場で楽しんで映像に残りたいと思っています。
伊澤 彩織氏
俳優・スタントパフォーマー
月刊『同朋』2024年5月号
(東本願寺出版)より
著名人 2025 09