女性を描いた作品が多いですが、制作で意識されてることはありますか?
表情を描かないのは一つの特徴かなと思います。イラストの業界でも、細身でかわいい理想像的な女性が描かれることが以前は多かった。「みんなこういうのが好きだよね~」とは思いながら、少し違和感を感じていました。なので私は、かわいい・かわいくないという基準から解放されたいなと思って、表情を描かないようにしています。世の中にはいろんな人がいるのだから、いろんな人を描きたい。理想ばっかりじゃなくて、肉感的でリアルな表現も大切にしたいです。
色彩に関しても、肌や髪の色などにも自在に配色がなされ、多様な人物が描かれています。
その時の気分で使いたい色を選びます。例えばピンクを服の色に使いたいなと思ったら、肌は青色にしてみたりと、色合わせを楽しんでいます。でもこれらは、かつての広告業界ならば、敬遠されていたでしょう。この4、5年で、肌の色やジェンダーなどの多様性の大切さが少しずつ共有されてきた感があります。昔なら広告は白人女性ばかりが登場していたけれど、今は変わってきてますよね。こうした業界の変化は、見せかけのポーズと思う人もいるかもしれませんが、多くの人の目にふれる広告だからこそできることがあるはず。小さい積み重ねでも、後の世代が生きやすくなるような変化を起こす力が、広告やイラストにはあると信じています。
一乗 ひかる氏
イラストレーター
月刊『同朋』2024年3月号
(東本願寺出版)より
著名人 2025 11