仏教の教えについて

言の葉カード

 四苦八苦という言葉があります。「生・老・病・死(しょう・ろう・びょう・し)」という四つの苦しみ。そして後の四つがあるわけですが、その中に「愛別離苦(あいべつりく)」という、いとしき方との別れの苦しみが出てきます。
 死ということを境にして、亡くなられた方は「死苦(しく)」に出会い、遺された私たちは「愛別離苦」の涙を流すわけです。ともに同じ涙なのでしょう。私の方が送られる側に立つか、また送る側に立つか。どちらにしても離別という問題が必ず私たちには起こってきます。
 この別れの涙を通して、どうか、自分自身に起こる事柄を、全てが人生の大切な出来事として受け止める眼を開いてもらいたいというのが、亡くなられた方からの一番深いメッセージなのだと思います。
 枕勤(まくらづと)めをし、通夜、葬儀、還骨(かんこつ)、初七日(しょなのか)…、そして納骨、法事へと続く時と場を通しながら、亡き方と出会った私たち一人ひとりが、亡き方の、ほとけさまとしてのメッセージ、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)を静かに聞いていく。それが浄土真宗における仏事の願いとして伝わってきたのではないかと思います。

『ブッダの教え』
二階堂 行壽氏
真宗大谷派 專福寺住職(東京都)

『亡き方からのメッセージ ―浄土真宗の葬儀―』
(東本願寺出版)より
教え 2025 03