著名人の言葉

言の葉カード

 「迷惑かけて ありがとう」。昭和の時代、プロボクサーからコメディアンになった、たこ八郎さんの言葉です。実はこれこそ、終活の極意ではないでしょうか。
 終活は、ともすると「迷惑をかけたくない」あまり、すべてを「自分で」となりがちです。確かに、人生最後の段階でどんな医療・介護を受けたいかを考えることや、遺言作成など自身ですべきことはあります。でも、死後に自分で棺に入ったり、さまざまな手続きをしたりはできません。最後は必ず「誰か」を頼らねばなりません。だから私は「終活を意識したら集活」が大切だと考えます。集活とは「集うて話をする、縁を結ぶ」という造語です。
 他者と生きるとは、多かれ少なかれお互いに「迷惑」をかけあうことです。詰まるところ「迷惑をかけない=孤立」です。迷惑をかけあえる関係性や、手間を迷惑とは感じない関係性を結ぶこと。最期に「ありがとう」といえる相手のいること。それこそが豊かな人生ではないでしょうか。
 たこさんはボクシングの後遺症で失禁や記憶障害があり、周りに「迷惑」をかけたかもしれません。それでも多くの人に愛されました。葬儀では赤塚不二夫さんら友人たちが泣きながら万歳三唱で見送ったそうです。

星野 哲(さとし)氏
ライター・朝日新聞元記者

『ライフエンディングノート
生きることを始めるための遺言ノート』

(東本願寺真宗会館)より
著名人 2025 02