暮らしの中の仏教語

言の葉カード

 お寺の子ども会で質問されました、「親離れってどうすればできると思う?」。いきなり言ったのは、6年生のM君。たぶん学校で友達に何か言われたのでしょうか。そんなことはわからないなぁと思いながら、「いや、親の方もなかなか子離れができないんだよ。おとなになった我が子に、いつまでも世話を焼くので子どもたちが嫌がることが多いよ」と言いました。
 それを聞いたM君、「おとなになっても世話を焼かれるのはいやだなぁ、今でも口うるさいと思うのに」と言います。「お母さんやお父さんの言う通りにするんじゃなくて、口うるさいと思えるなら、親離れしかけているんじゃないの、それはたぶん自然とできることだと思うよ」と話しました。M君は「そうかなぁ」と半分納得したような顔を見せました。
 他人どうしでも親子でも、その間が愛情で結ばれ関わることがあります。ただ、人間の愛情は、愛する相手の自由や主体性を奪ってしまうことになることがあります。以前、中学生になった息子が乱暴な言葉遣いをし、言うことをきかなくなったがどうしたものかと相談を受けたことがあります。いつまでも優しく可愛い息子でいて欲しいというお母さんの気持ちもわかりますが、息子さんは親から独立して歩んでいく準備が始まっているのだと思いますとお話ししました。
 仏教では、人間の愛を「乾き」で表し「渇愛(かつあい)」と言います。喉が渇いて水を欲しがるように、相手を自分の潤いにしようと求め、自分の所有物にするように執着してしまうということです。その問題に気づかせようとはたらく仏様の愛情は慈悲(じひ)と表されます。

四衢 亮(よつつじ あきら)氏
真宗大谷派 不遠寺住職(岐阜県)

仏教語 2025 02