やる気に満ちあふれた興奮状態は、誰もが経験することでしょう。私も学生時代、部活動で心が昂(たか)ぶることがありました。その結果、勢い余って怪我をしたり、仲間に迷惑をかけたりしていたので、よく昂ぶりを抑えるように指導されていました。
しかし興奮した私には、その指導の声が届かず、ようやく聞く耳を持てたのは、選手としては致命的な怪我をしてしまった時でした。
練習以上の力を出そうと、必要以上に力むより、周りのアドバイスに耳を傾け、いつも通りにやろうとリラックスした状態で集中した方が良い結果に繋がるのだと、この時に学ばせて頂きました。
心が昂ぶり、平静を失った状態になる煩悩(ぼんのう)を「掉挙(じょうこ)」といいます。心も身体も溌剌(はつらつ)と元気な時もあれば、鬱々(うつうつ)と暗く沈み疲れることもあります。心のバランスを取るためには、個人の努力だけでは難しいものです。周りの方々のアドバイスが自然と聞こえてくるようになるには、普段から聞く姿勢を持つ習慣が肝心です。
仏教では先ず「聞く」という姿勢を大切にしています。法座(※)が開かれる時、唱和する『三帰依文(さんきえもん ※)』の言葉の中に「仏法(ぶっぽう)聞き難し、今すでに聞く」とあります。古くから聞く姿勢というものを大切に伝え続けてきた習慣なのです。お念仏がその扉を開いてくれます。
- 法座
- お寺などに集まり、お話を聞くこと。
- 三帰依文
- お釈迦さまが説かれた「法」、法に目覚めた「仏」、法を依りどころとする人の集まり(=「僧」)の3つを「三宝(さんぼう)」といい、「そのことを大切な宝ものとして生きていきます」と、法話の前などに唱和される文。
『三帰依文』
『教化センターだより』NO.431
(大阪教区教化センター)より
教え 2024 11