「生死(しょうじ)」は、「輪廻(りんね)」と同義の言葉で、「六道に生まれかわり死にかわり流転(るてん)すること」(『真宗新辞典』)です。「生死」も「輪廻」も「流転」も、私たちが苦しみの境界(きょうがい)をへめぐる迷いのあり方を表現した言葉です。
私たちは、迷おうと思って迷っているわけではありません。誰も、不幸せになりたいと思って生きている人はいません。幸せになりたいという思いで生きています。けれどもそうならないのはなぜでしょう。
「あの人のせいだ」、あるいは「社会が悪いんだ」。出てくるのは愚痴(ぐち)ばかり。どこまで行っても愚痴で終わっていくしかない。それが、人間としての苦しみ、出口のない迷いのあり方です。
そのあり方が、「生死の苦海ほとりなし」と、龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ ※)の身を通して教えられているのでしょう。
- 龍樹
- 二世紀頃の南インドの僧。大乗仏教の確立に大きな影響を与えた
「高僧和讃」(親鸞)
吉元 信暁(のぶあき)氏
九州大谷短期大学教授
『和讃の響き―親鸞の声(うた)を聞く』(東本願寺出版)より
教え 2024 03