僧侶の法話

言の葉カード

 亡き人をご縁にして勤める仏事は、まず亡き人をしっかりと思い出すという意味がある。そして、亡き人の面影を通して、亡き人から学ばなければならないことを学び直すという意味があるのだと。その面影は、遺された言葉かもしれない、何気なく交わした会話かもしれない、生前の生き様かもしれない、息づかいかもしれない。かたちは様々でしょうが胸の奥に刻まれた亡き人の面影が必ずあるはずです。その面影から学ばなければならないことを学び直すのです。

 我々は亡くなった方を仏様とお呼びします。しかし仏という言葉には故人という意味はありません。仏とは、本当に大事なことを覚(さと)り、そのことを我々に教えてくださる方という意味があります。

 そういう意味で、亡き人から本当に学ばなければならないことが学べたとき、我々は亡き人を仏様とお呼びできるのでしょう。仏事とは、亡き人と仏様として出遇(あ)い直す場所と時間なのだと思います。

谷 大輔氏
真宗大谷派 良覺寺住職(滋賀県)

『花すみれ』2021年1月号(大谷婦人会発行)より
法話 2023 08