以前「サビは鉄より出(い)でて鉄をくさらす。グチは人より出でて人をくさらす」という言葉を目にしました。日々のできごとを悔やむ愚痴(ぐち)は、その人の生活を暗くしていきます。もし、冒頭の言葉が「これまでがこれからを決める」だったら、その人生観では、辛いことやイヤなできごとが起こるたびに「どうせこんなもんや」と居直ったり、「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と不安を膨らませたりして行き詰まっていくのではないでしょうか。
藤代先生(※)は「命終わる時に仏になる―これが今現在の言葉でなければなりません」とも言われました。この言葉を私なりに受け止めると、仏さまの教えを頼りにして今を生きることで、私たちのモノの見方が転じ、未来が開かれ過去が見直されてくる。先生は、それを冒頭の言葉で表現されたのだと思います。仏さまの教えは、愚痴ばかりの私たちの姿を照らし出す光として、様々な言葉や表現となって私たちにまで届けられているのです。
- 藤代聰麿(1911~1993)
- 真宗大谷派僧侶
津垣 慶哉氏
真宗大谷派 正應寺住職(福岡県)
真宗会館広報誌『サンガ』163号より
法話 2022 09