「地中蓮華、大如車輪。靑色靑光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光。微妙香潔」。
(ちちゅうれんげ、だいにょしゃりん、しょうしきしょうこう、おうしきおうこう、しゃくしきしゃっこう、びゃくしきびゃっこう、みみょうこうけつ)
ここでは、人間が苦しみから救い取られる世界を、蓮の華の咲く様として語られています。蓮は泥田のなかに華を咲かせます。泥田は、人間社会のさまざまな苦渋に満ちた出来事を指しています。「碍(さまた)げ」に満ちた時代や社会の出来事のなかから「転換」して、大輪の蓮の華が咲く様は、救い取られた晴れやかな世界を見せてくれます。「地中蓮華、大如車輪」と、大きな車輪のような蓮の華が咲く様は、
「靑色靑光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光」と、青き色には青き光、黄なる色には黄なる光、赤き色には赤き光、白き色には白き光、と説かれています。その姿こそ「微妙香潔」であり、そのことが素晴らしい、と繋がります。
ひとは、お仕着せの「らしさ」を身に纏(まと)い、「みんな」と同じになることに腐心し、安住しようとしています。しかし、その泥田から救い取られた蓮の華は、それぞれの光を放ち、その姿が実に尊い。そこには、借り物ではない「じぶん」の人生を生きること、また、なにも隠したりする必要のない、それぞれが誰と比較されることなく、「じぶん」の人生の色と光を放ち「ともしび」となることが説かれています。
『仏説阿弥陀経(ぶっせつあみだきょう ※)』
- 『仏説阿弥陀経』
- 浄土真宗で大切にされる経典(お経)の一つ。
佐賀枝 夏文氏
心理カウンセラー・高倉幼稚園 前園長
月刊『同朋』2016年2月号(東本願寺出版)より
教え 2021 10