暮らしの中の仏教語

言の葉カード

 「平等」と言えば、現代では政治的な用語のように思いますが、もともとは仏教語です。意味も多岐に渡りますが、「あまねく、一様に」ということです。浄土真宗では、特に阿弥陀(あみだ)さんの慈悲を表す言葉です。
 阿弥陀さんの悲愛(ひあい)は、すべての苦悩するものを、あまねく救うと誓われています。もし一人でも救いから漏れるものがいたなら、私は仏には成らないと誓います。そうは言われても人間は、「どうせ私なんか、救いから漏れているに違いない」と考えてしまいがちです。私たちは疑い深くなってしまったのです。無条件に救われる世界など信じられないと。ところが、その「どうせ私なんか」と拗(す)ねるこころの持ち主をこそ目当てにされているのが阿弥陀さんの悲愛です。
 疑い深くなってしまった私のこころを優しく包み込み、とろかせてしまうものこそ、「平等なる阿弥陀さんの悲愛」だったのです。

武田 定光氏
真宗大谷派 因速寺住職(東京都)

仏教語 2020 09